江ノ本のつれづれblog

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【レビュー/60点】『猿の惑星/キングダム』前半は退屈だが終盤で次回作が待ち遠しくなる!

本記事は『猿の惑星/キングダム』のレビュー、感想となります。

!!!ちょっとネタバレを含みます!!!
前半は退屈に感じましたが、終盤の展開によって次回先が楽しみになる作品でした。
猿の惑星』シリーズに特別な思い入れの無い私としては、100点満点中60点の評価となります。

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www.20thcenturystudios.jp

 

作品情報

監督:ウェス・ボール
配給:ディズニー
公開:2024年5月10日
作品時間:145分

簡単なあらすじ(導入から前半終わり)

伝説のエイプ シーザーの時代から300年が経ち、人間の文明は衰退しました。
エイプの一族イーグル族は平和に暮らしていました。イーグル族は鷲を飼いならして共に生活しています。
一族の若者ノアは儀式の為に鷲の卵を探していましたが、その道中で人間と接触、さらには別のエイプの部族がイーグル族の村を襲うきっかけを作ってしまいます。
村は焼かれ、仲間は連れ去られてしまいました。責任を感じたノアは仲間を連れ戻すために旅に出ます。
旅の途中でノアはオランウータンのラカに出会います。ラカはシーザーの教えを受け継いできたエイプです。
ノアはラカからシーザーの教えを聞き今まで知らなかったこの世界の姿を知ります。
ノアが以前出会った人間の女がノアの後をつけてきました。
ノアは人間を追い払おうとしますが、ラカはこの人間の女に「ノヴァ」と名付け、「シーザーの導きかもしれない」として3人で旅に出るようにノアを説得しました。
3人は旅の途中で知能が退化した人間の群れを見つけました。
ノヴァは人間と一緒に暮らすべきと考えたノアはノヴァをラカに託して旅を続けようとしました。
そこにイーグル族の村を襲ったエイプの集団が現れて人間の群れを襲いました。
その集団はノヴァを探しているようでした。
異変に気が付いたノアはノヴァとラカを救いました。この時ノヴァが言葉を発しました。
ノヴァが言葉を使えることを黙っていた為ノアはノヴァを不審に思いました。
ノヴァは謝罪し、本当の名前はメイであると話しました。
3人は大きな川にかかった橋を渡ろうとした時にもう一度襲われてしまいます。
ノアとメイは謎の集団に捕らえられ、ラカは川に流されてしまいました。
ノアが目覚めるとそこはプロキシマス・シーザーと名乗るエイプの王が君臨する王国でした。
プロキシマスは人間が残した技術を手に入れて王国をさらに強大にしようと考えていました。

退屈で重苦しい導入は×

物語の導入から前半部分を文字に起こしました。
展開としても映像としても退屈に感じてしまいました。
展開としては、要はノアがイーグル族の村から旅に出ればいい訳ですが、そこに至るまでの過程がノアにとって非常に辛いものであり、見ていてとても重苦しい気持ちになります。
この手のいろいろと背負ってしまう主人公というのは、個人的にかなり食傷気味で、もう勘弁してくれという気持ちです。
背負うにしても序盤に一気に背負わせるのではなく物語のアクセントとして中盤に持ってきてほしく思います。
別に村が襲われなくてもいいじゃないかと思うのです。この旅自体が部族にとっての儀式というような設定にしてワクワクする旅立ちを描いたり、何か使命を背負って村の仲間に見送られたりしても(『もののけ姫』みたいですね (^ ^;))本作の話の核の部分は変わらないと思います。
映像としても、映画開始冒頭からノアが儀式に使う鷲の卵を野生の鷲から拝借する為に森の中を探索する中で無茶をして一歩間違えば命を落としてしまうようなスリリングな描写がされるものの、見ている側としては特に説明もなくいきなり命知らずな行動を見せつけられるのであまり感情移入できませんでした。ただの食料を探しているのかしらと思ったらだいじな儀式に使うということで、納得しましたけども、今思えば飼っている鷲を繁殖したらいいじゃないか(笑)という気もします。
そんな導入を経てノアが村を出て聡明なオランウータンに出会うまでに40分くらいは使っていたと思います。長く感じました。

次回作が気になって仕方ない終盤は○

後半はなんやかんやあってノアとメイ、仲間のエイプが協力し合ってプロキシマスに対抗し、メイの秘密も明かされますが、ノアは人間に対する疑念を強く持つようになります。
この「なんやかんや」の部分は非常にエキサイティングで楽しめるものでした。

  • ラカから教えてもらったシーザーの想いとプロキシマスの思想の間で葛藤するノア
  • メイが隠している本当の目的
  • たくましく立ち上がるノアの雄姿

これらの要素が絡み合って、見応えのあるものでした。
しかし、終盤にも取ってつけたようにスリリングなシークエンスがあり、いい加減にしろと思うところもありましたが、これは前半からの積み重ねによるもので、映像としては迫力があり良いものでした。ここまで来たらとっととラストにつなげてくれとは思いましたが…。
ラストで広げられる風呂敷は今後の壮大な展開を予感させるもので、次回作が待ち遠しくなったので、最終的な印象としては悪い映画ではありませんでした。

宣伝で目立っているプロキシマスは魅力が弱い△

ノアの村を襲い、ノアとメイを捕らえるボス猿プロキシマスはシーザーの言葉を歪曲して他のエイプを従えて王国を築いています。人間の技術を手に入れて人間に対抗するという考え方は本作にシリアスな空気をもたらしますが、そのやり口は非常に乱暴なもので「所詮はおサル」というようなキャラクターになってしまっています。
もっとカリスマ性を感じるような賢明なキャラクターにしていればノアの葛藤も深みを増したのではないでしょうか。
そもそも本作における悪、エイプにとっての脅威は人間なのでどうしてもプロキシマスはその前座、小物のような印象を受けました。
そのプロキシマスを映画ポスターでメインに据えたり、題名に「キングダム」の文言を盛り込んだりするのはミスリード、もっと言えば肩透かしでしかありませんでした。
もう少し序盤からプロキシマスを登場させてエイプ側のダブル主人公としてノアと対等な関係にあるエイプとして描くなどやりようがあったと思いますが、実際は中盤にぽっと出てきた猿山の大将になっていました。

VFXは素晴らしいが、結局はサル

本作のVFXは非常に美しく、エイプ達はかなりリアルなチンパンジーやゴリラの姿をしていますが各キャラクターの顔の見分けをつけることができました。
しかし、そのせいもあって見るからにサルの彼等が流暢に言葉を話している姿に違和感を覚える部分もありました。第1作の『猿の惑星』に出てくるサル達の「特殊メイクの隙間から覗き込む人間の目」には、言葉を話すサルとしての説得力がありました。
また、どんなに美しいCGであってもサルはサルなので見ていて飽きてきます。サルが大好きな人には問題ないでしょう。もっといろんな装飾品をつけてエイプ達に個性を出したら楽しかったのではないでしょうか。
もっと言ってしまえば、素人目には前回のリブートシリーズの時点でサルのCGは行きつくところまで行きついているのでリアルなサルに新鮮味はありません。細かいところを見比べると印象は変わるかもしれません。

まとめ

前半は退屈で重苦しく私の好みとは異なる部分もありましたが、後半の展開はエキサイティングであり怒涛の種明かしもあって見入ってしまいました。終盤で広げられた風呂敷は次回作への期待を高めてくれます。
キャラクターの魅力は正直弱いです。特にプロキシマスが肩透かしでした。本文であまり触れませんでしたが個人的にはオランウータンのラカが好きです。次回作にも登場してほしいのは彼だけです。
本作は145分作品となっていますが、100分くらいにまとめてくれたら100点満点中80点にはなったと思います。しかし実際は次回作への期待を込めても60点くらいです。
あまり好きではない前半部分についてたくさん書いてしまいましたが、これから鑑賞に行く人に向けて「前半はこんなもんだから肩の力を抜いて観てね」と声をかけるつもりでおせっかいな気持ちで書きました(^ ^;)

最後までお読みいただきありがとうございました!

(やっぱり第1作が至高かな。)