江ノ本のつれづれblog

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【レビュー/60点】『マン・オブ・スティール』コレだいたいドラゴンボールだ。1時間半我慢すれば圧巻の戦闘シーンが待っている!

こんにちは。

気まぐれで2013年公開作品『マン・オブ・スティール』(Man of Steel)を観たのでレビュー。

私は『スーパーマン』シリーズやアメコミにそこまで馴染みはないのだが、『ドラゴンボール』との類似点を見出してすんなり入っていけた。迫力の戦闘シーンにも大満足。

しかし、映画全体の構成が受け入れられず。

100点満点中60点くらいかな。

もう10年以上前の作品だけど、ネタバレされたくない人はご注意。

基本情報

監督:ザック・スナイダー

脚本:デヴィッド・S・ゴイヤー

原案:デヴィッド・S・ゴイヤークリストファー・ノーラン

原作:DCコミックス

配給:ワーナー・ブラザース

公開:2013年

上映時間:143分

設定も戦闘もドラゴンボールみたいだ

ドラゴンボール』好きな人に『マン・オブ・スティール』をおすすめしたい。

『マン・オブ・スティールは』だいたい『ドラゴンボール』だ。日本生まれ日本育ちの30代40代の人ならピンとくると思う。まず設定から見てみてほしい。

  • よその惑星を植民地にするクリプトン人⇒よその惑星の住民を殺して売りに出すサイヤ人
  • クリプトン星は惑星のエネルギーが枯渇して滅亡する⇒サイヤ人の母星惑星ベジータフリーザの襲撃によって滅亡する
  • 滅亡寸前の母星から両親の希望を背負って送り出されるカル=エル(スーパーマン)(ヘンリー・カヴィル)⇒滅亡寸前の母星から父バーダックの希望を背負って送り出されるカカロット孫悟空
  • カル=エルは地球の父の教えを守って本当の力を隠して生きる⇒孫悟空は地球の育ての親の教えを守って満月を見ないように生きる(巨大な猿にならないようにしている)
  • クリプトン人は宇宙のどこかに生きているカル=エルを探して地球にたどり着く⇒サイヤ人は宇宙のどこかに生きている孫悟空を探して地球にたどり着く
  • カル=エルは育ての父によって感覚を制御する力を身に着ける⇒孫悟空亀仙人のもとで修業することで気のコントロールを身に着ける
  • クリプトン人のゾッド将軍(マイケル・シャノン)は生まれてからずっと訓練を積んでいて、地球でのほほんと暮らしていたカル=エルに負けるはずがないと自負している⇒サイヤ人の王子ベジータは天才である自分が下級戦士の孫悟空に負けるはずはないと自負している
  • ゾッド将軍はカル=エルが身に着けている感覚制御の能力を持っていないため予想外に苦戦する⇒ベジータは地球人が使う急激な戦闘力のコントロールができないため予想外に苦戦する

ほら、『ドラゴンボール』でしょう。私はアメリカンコミックに明るくないのでDCコミックスの『スーパーマン』シリーズの設定がそもそもここまで『ドラゴンボール』に近い形で構築されてきた歴史があるのかはちょっとわからない。だからどっちが先かはわからないが、おそらく鳥山明がアメコミ好きであることからも『スーパーマン』が鳥山明に影響を与えたものと思う。

https://lineup.toei-anim.co.jp/upload/save_image/episode/5203/story_img_1.jpg

(引用:第 105 話 三人のスッパマン - Dr.スランプ アラレちゃん - 作品ラインナップ - 東映アニメーション

これらの類似点のおかげで私は本作に思いの外すんなりと入っていくことができた。アメリカ人に長年愛されてきた歴史がある題材なので日本人としては距離を感じてしまうかも知れないが、そこは心配せずに観ることができる。さすがアメリカ、普遍的にウケる要素で固めている。それを日本のバトル漫画としてうまく落とし込んだ『ドラゴンボール』が世界中でウケているのも納得だ。

とはいえ、設定が『ドラゴンボール』に似てるからといって「そいつはおもしろそうだ!」と思う人はそこまでいないだろう。『ドラゴンボール』の設定のおもしろさは、連載開始当初に想定していなかったであろう設定を巧妙に後付けしてなんでもありの世界を作り上げた点にある。バトル漫画に振り切った後の『ドラゴンボール』の魅力といえば、やはり鳥山明の漫画力とアニメスタッフの尽力による迫力の戦闘シーンにある。

そんなドラゴンボール』のような戦闘シーンを本作『マン・オブ・スティール』も私達に提供してくれる。だから私は『ドラゴンボール』好きに『マン・オブ・スティール』をおすすめしたい。

ドラゴンボール』のかめはめ波のようなエネルギー弾の撃ち合いは少な目(一応クリプトン人は目からビームを撃てる)だが、空を飛び、ものすごいスピードで動いて、相手を殴り蹴り、とてつもなく重い一撃を喰らわせる戦闘はまさしく『ドラゴンボール』である。殴られたスーパーマンも敵のクリプトン人も新宿から渋谷くらいの距離を吹っ飛ばされて地面や建造物に叩きつけられるがピンピンしているのもまさしく『ドラゴンボール』である。クリプトン人が地球人の銃撃やミサイルを喰らってもピンピンしているのも(略)。

基本的に殴る蹴るだけの戦闘なので、『スパイダーマン』や『アイアンマン』のような自身が持つギミックをあれこれ披露したり機転の利いた作戦で相手をやりこめたりするようなおもしろみは無いのだが、人間離れした超人同士がぶつかり合う映像はシンプルな強さを楽しむことができる。超人的な力がぶつかり合うことによる市街地への甚大な被害も描かれている。これについてやりすぎているという声もあるが、正直言ってこの破壊描写が無ければこの映画におけるクリプトン人同士の戦闘シーンの魅力はほとんどなくなるだろう。これだけの破壊描写を根気強く映像化したスタッフには頭が下がる。鳥山明は作画コストを下げるために戦闘シーンになると舞台を変えていた。週刊連載じゃなかったらもっと違う漫画になっていたかも知れない。

また、クリプトン人に比べるとどうしようもなく無力な地球人がスーパーマンと協力して活躍するというのも『ドラゴンボール』的である。というよりも、鳥山明が描くストーリーはそのままハリウッド大作映画にもっていけるようなグッとくる要素がちりばめられていると言える。『マン・オブ・スティール』では、最初は主人公と対立したり足を引っ張っていたような登場人物がここぞというところで粋な活躍を見せるという展開がある。これは『ドラゴンボール』で言えばヤジロベーやミスターサタンを思い起こさせる。『マン・オブ・スティール』ではアメリカ人が意外と大好きな自己犠牲的な見せ場のためにその手の登場人物が命を落としてしまうのでちょっと寂しい気持ちになる。

本作の登場人物をそのまま孫悟空やブルマ、ベジータにして実写版『ドラゴンボール』として公開してくれたらアメリカ人が『ドラゴンボール』を実写にしたらこうなるよね、これはこれでちゃんと『ドラゴンボール』してるね、という感じでおそらく世界中から絶賛されたのではないだろうか

圧巻の戦闘シーンまで映画開始から1時間半を要する

そんなこんなで『ドラゴンボール』みたいでおもしろいなあと楽しんだ『マン・オブ・スティール』ではあるが、本作が『ドラゴンボール』みたいにおもしろくなるまでに映画開始からおよそ1時間半が経っていた

これは問題である。スーパーマン孫悟空のように戦い始めるまでの1時間半の間に何が描かれていたかといえば、クリプトン星の内輪揉め、カル=エルの幼少期の苦悩、現在のカル=エルの葛藤、女ジャーナリストによる南極で発掘された謎の遺跡の取材と謎の人物カル=エルの調査である。映像としてやけに尺を取っているくせにやたらとセリフで各種設定を説明している。そんなにカル=エルの身の上について「実はお前は~」とセリフで説明してくれるならそれを活かす構成にすればよかったのに。

クリプトン人の母星での内輪揉めに20分くらい映像を割いているのだが、ここが一番蛇足に思えた。掘り下げたい気持ちもわかるのだが、スーパーマンのおもしろみは私達の地球で超人的な戦闘が行われるところにあるのだから、よその星のよその住人同士の喧嘩は正直いらなかった

地球でのカル=エルの境遇を描くことでカル=エルの精神的な救済を強調したかったのだろうが、アイデンティティの問題や育ての父との死別などいろいろと背負いすぎているし何十分も苦悩している時間が続くので観ていて気が滅入る。ある程度スーパーマンとしての活躍が市井の人々に受け入れられている設定にすればゾッド将軍達が地球に来訪したときの世論が割れる展開や報道機関に勤めるロイスや編集部の人達の見せ場も作れたりしたんじゃないだろうか。あまり身近な存在にしてしまうと『スパイダーマン』との差別化ができないかも知れないが、展開のシェイプアップと構成の工夫をしてほしかった

まとめ

後半50分ほどのほとんど休憩無しの戦闘がめちゃめちゃ激しくて大満足

映画全体のトーンは暗いが、超人的戦闘による破壊描写とカル・エルのいいやつ感を引き立てている。

最後の「こうしてカル=エルはクラーク・ケントとして新聞記者になりました」というオチも綺麗で視聴後の余韻も良い

他に言及するとすれば、ロイス役のエイミー・アダムスが勇気ある女性をチャーミングに演じていてGOOD。正直、前半の見所はロイスしか無い。ロイスのおかげで前半を乗り切れた。編集部のみんなも助かってよかった。総じてクリプトン人のおかげで地球人側の善性が際立っている。これはおそらく西欧人の自虐であろう。

pin.it

これで前半がすっきりして全体で110分くらいにまとまっていたら、80点。そうじゃないので60点かな

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

Amazon Prime Videoで視聴可能。

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