こんにちは。
今さらですけども『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(原題:Mad Max: Fury Road)を鑑賞したのでレビュー・感想を残します。
最新作『マッドマックス:フュリオサ』(原題:Furiosa: A Mad Max Saga)の予習を兼ねて鑑賞しました。
本作はイカれてるのに実は真面目で丁寧で、なおかつ迫力とカタルシスに満ちた万人向け娯楽作品でした。
100点満点中80点といたします。
ファンの持ち上げを気にせず素直に見てみた
実は、今回最新作の予習を兼ねて本作を鑑賞する何ヶ月か前にも本作をサブスクでちょっと鑑賞していたのですが、その時はあまりいい印象を受けずに途中で鑑賞をやめてしまいました。
というのも、本作は劇場公開後SNS等でファンの絶賛が非常に多く、それらの意見は私の目にも入ってきていたこともあり、私の中で本作のハードルは高く高く上がっていました。それだけにとどまらず、大変勝手ながら、私には本作の熱心なファンの振る舞いが押しつけがましい布教活動のように感じられてしまい、悪い印象を持っていたため、私は本作を色眼鏡で見てしまっていました。
しかし今回の鑑賞にあたっては、他の映画鑑賞や読書体験によって私の心が洗われていたため、非常に楽しくマッドマックスを体験することができました。
映画というのは「いつ観るか」「いつ出会うか」というのも大切な要素ですね。
万人向けではない万人向け作品
さっぱりとしたノンストレスな構成
事前に持っていたイメージとは打って変わって本作は親切な映画でした。小難しいことは一切無し。「頭空っぽにして楽しめる」という褒め方は嫌いだが、作中で描かれている事象を正面から捉えていけば自然と作品にのめり込むことができました。
アクションシーンと最低限の説明シーンのメリハリがついているので、激しいアクションに流れに身を任せる場面と登場人物の言葉に耳を澄ます場面とを間違わなければ全体像をつかむことができる作りになっています。
一部、言葉であれこれと説明されない要素もあり、映像に集中する必要はありますが、嫌でも目に飛び込んでくる刺激的な映像で本作の世界の成り立ちをつきつけてくるので、むしろ言葉で説明される要素のほうが気を抜いていると置いて行かれるかも知れませんね。
序盤の「どういうこと?」「どういう人なの?」という要素がしばらくそのままに話が進んでいく部分もありますが、しっかりと後のシーンで拾われるので気持ち悪さが残らないところが、めちゃくちゃに見えるけど優しいところあるじゃん(ぽっ)という感じで好印象でした。
血液袋の設定やフュリオサの義手が、なるほどなるほどこれがやりたかったんだな、と腑に落ちて私の中では地味に満足でした。
また、本作の終わり方は続編をにおわすこともなく、さらには登場人物のその後もまったく描くこともなく、虐げらていた人々の勝利と解放という「高揚」と英雄の一人マックスが静かに去るという「渋み」とをさらりと描き終幕することで、非常に爽やかな余韻を与えてくれました。かっこいいかよ。
イカれた映像でテーマは普遍的
そんなとっても見やすい作りの本作ですが、その中で風刺的とも取れるテーマ(ジェンダー論)を扱っているところも特徴ですね。
性の問題について「風刺的」という言葉を使いましたが、今の時代にちょうど注目されている事象というだけで、本作が扱う普遍的テーマ(強者と弱者、男と女、支配と自由、暴力と平和…)のうちのひとつであると言えます。
狂気の近未来世界だからこそそれらをヒロイックにもグロテスクにも強調して描くことができます。荒々しくおバカなようでいて見る角度によっては真面目にメッセージを感じ取ることもできることが本作に深みを与えていますね。
ビジュアルでハッキリ見せてくる一方でメタファーも組み込まれているため安直な印象にはなりません。フュリオサの故郷の老婆が持っている「汚染されていない種」は、今の世界を支配する男とは異なる本来の健やかな男、未来を共に歩んでいける男を表していますね。他にも作中に散りばめられているでしょう。
本作では女達は非常に過酷な運命に晒されています。おそらくは、製作スタッフ達の中にはマッドマックスという素材を使ってどうしたら効果的に狂気を演出できるかという意識がまずあり、その製作の過程で女性の扱いがピックアップされ、デフォルメした非倫理的な描写を徹底した結果が本作である、と私は観ています。その副産物としてジェンダー論的メッセージ性を押し出すことにも成功したのではないでしょうか。
何故か惹きつけられるキャラクター
火炎放射ギター男
なんなのでしょうか、彼は。かっこよすぎます。真っ赤な全身タイツに火を吹くギター。しかし彼はかっこいいだけです。そこがいい。
彼が奏でるギターからは火炎が吹き出ますが、それによる戦績はそれほどなく、むしろ場を盛り上げるためだけに火を吹いています。
こんなイカしたナリをしていならがら命綱を使っているという点も、愛すべきポイントです。終盤ではこの命綱でぶらんぶらん可愛く揺れています。
さほど好戦的ではなく命の心配をされているということは、イモータン・ジョーの軍団における彼のポジションは根っからのにぎやかし野郎に違いありません。
高校野球でいうところの、伝令係としてチームになくてはならない愛されキャラの部員のような男なのではないでしょうか。
両乳首ピアスチェーンつなぎ男
彼は左右の乳首にピアスを開け、その両方をチェーンでつないでいます。
なんでそんなことをしているのか私にはわかりません。カッコつけられてないよ?邪魔でしかないと思います。
この風貌そのものというよりは、こんな変態ないでたちでありながらサラッと当たり前のように彼が画面に映りこんできたことにシビれました。
彼は私の中では「まだこんなおかしなやつが控えていたのか…」というようなダメ押し役として私の心に刻まれました。
ウォーボーイズくん達
イモータン・ジョーの軍団を構成する白塗りのスキンヘッド達。
彼らはまるで仮面ライダーのショッカー戦闘員のようでどこか憎めない存在でした。
自らが信じる狂気に対してひたむきに愚直に突き進む彼らによって本作の善悪のグラデーションが生まれていましたね。
まとめ
『マッドマックス 怒りのデス・ロード』は灰汁の強いビジュアルと驚異のアクションで狂気の世界を描きつつも、すっきりとした構成と普遍的なテーマによって多くの人がその世界の魅力を爽快に楽しめるイカれた万人向けの作品でした。
現在は各種サブスクで見放題視聴できます。私はNetflixで観ました。
最新作『マッドマックス:フュリオサ』の前に予習するも良し、最新作鑑賞後に興味を持っておかわりするために観るも良し、興味を持った方には是非観てほしい作品です。
最後までお読みいただきありがとうございました。