江ノ本のつれづれblog

映画やゲームのレビュー・感想を中心に書いていきます。

積んでいる本は打率が高い

積んでいる本は過去のあなたから現在のあなたへのプレゼントである。

積んだっていいじゃないか

買った本を読まずに本棚に寝かせっぱなしにし、「せっかく買ったというのに、もったいない。ああ、自分はダメな人間だ」と思っている人はいないだろうか。いわゆる「積ん読」をしている自分を責めてはいないだろうか。そうです、あなたはダメな人間です。私と同じだ。嫌な気持ちになったでしょう。私も同じだ。私と同じような人が世界にたくさんいるかと思うと気が重い。しかし、ここで重い腰を上げてその本を読んでみてほしい。

本屋に行くとたくさんの本が並んでいる。その中からおもしろそうな本を見つけて立ち読みをし、もっと読みたいと思った時、あなたはその本を買って帰る。そして家に着いた時にはもう読む気がなくなっている。あなたはこの行為を何度繰り返しましたか?私は数えることをやめている。

しかし、一度でもその本を読みたいと思ったあなたの気持ちを大切にしてほしい。誇ってほしい。本を読みたくないと思う人の半歩先をあなたは歩いている。しかもお金まで出している。すばらしいことだ。おめでとう。ありがとう。

読もうじゃないか

まずは自室の本棚から良さげな本を取り出してみよう。そして机の上に置いてみよう。負荷が高い場合はここで終わってもかまわない。読み始めるのは明日にしよう。本は明日も読める。あなたは明日も自分の部屋にいるし、本も逃げていかない。本はよく躾けられた犬だ。

自室の本棚を眺めた時、あなたは気がつくはずだ。おもしろそうな本が多いな、と。そう、そこに並んでいる本は過去のあなたがおもしろそうだな、読んでみたいなと思った本ばかりなのだ。広い書店や図書館、Amazonをうろつくよりも手っ取り早い。こんなに素晴らしいことはない。

そして実際に自室の本棚の肥やしになっている本を読んでみるとおもしろいと感じることが多い。打率は7割ほどだ。イチロー大谷翔平もびっくりの数字である。なお、数字に根拠はない。しかし、過去のあなたがちょっと立ち読みをした後にお金を出してまで手に入れた本なのだから近からず遠からずな数字と言っても過言ではない。あなたの友人や同僚、上司、恩人、YouTuberやインフルエンサーがおすすめしてくれた本よりもよほど信頼できる。なぜなら、彼らはあなたではなく、過去にその本を購入した人物は今のあなたの一部だからだ。(ここで過去のあなたがそのまま現在のあなたと同一人物であるとしなかった私に対して大学で哲学を専攻した教養の一端を感じ取ってくれると、私の親が出してくれた学費も報われるだろう。)

私が崩した本を紹介しようじゃないか

さて、ここまで、本を積んでいるあなたの背中を押す言葉を書いてきた。なぜそのようなことを私は書いたのか。それは私が実際に積んでいた本を読んでみてイイ気分になったからである。積んでいた本を読むことを「崩す」と言う人が多い(たぶん)が、そもそもこの崩す感覚が気持ちがいい。そして、「これはおもしろい」「これはイイ本だ」「この本を選んだ過去の自分は良いセンスをしている」「さすが私だ」と自画自賛したくなる気持ちをこの文章を読んでいるあなたにも味わってほしい。たまにハズレもあるけれど、その責任の所在はどこにも存在しない。強いて言えば、買ってすぐに読まなかったあなたが悪い。

私は今、『もっと言ってはいけない』(新潮社)という本を読んでいる。橘玲さんによる「世間の誰もがうっすら思っているけれど言わないようにしている(タブー視されている)ことを書く本」シリーズの2本目だ。前作『言ってはいけない』(新潮社)を読んでおもしろかったのでシリーズ2冊目もおもしろいだろうと買ってから長年本棚で眠っていた。読んでみるとおもしろい。さすが過去の私だ。よくやった。

読んでいると「ふーんやっぱりな」「そうかもな」と思わされる内容が書かれている。

運がいいとか 悪いとか

人は時々 口にするけど

そういうことって 確かにあると

あなたをみてて そう思う

さだまさし『無縁坂』より抜粋)

こういうことをさだまさしさんが歌詞に起こしているが、まさにそういう気持ちにさせられる。「運」というか、「そういう星のもとに生まれる」というか、やはり生まれ持った資質、どんな親から生まれるかというのは人生に大きく影響するのだろうな、と考えさせられる。その結果心が落ち着く人もいるだろうから、そういう人におすすめの一冊だ。

まとめようじゃないか

というわけでみなさん、積んでいる本を読みましょう。積んでいる本は過去のあなたが現在のあなたにおすすめしてくれた最高の(可能性が高い)良書だ。読んで読んで読みまくろう。そうすると、やはり読書は楽しいと改めて実感するはずだ。

その後で、他に積んでいる本を読むも良し、新たな本との出会いを求めて書店に行くも良し、そこはあなたにお任せする。積ん読しているあなたのことだから、積む本が増えてしまう可能性もあるけれど、それはあなたの責任だ。もう大人なのだから自分で考えてください。

仮に積み本が増えたとしても自分を責めないでほしい。つらいときは一人で抱えこまず、未来の自分に押し付けてしまえばいい。出版不況をあなたが支えている。ありがとう。さようなら。

忠犬と積んだ本は逃げないよ。